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のざわのざわめき

7時半に目覚ましセットしたはずなのにもう8時半
「あんたたちいつまで寝てんのさ」お母さんの呆れたような声が扉の外から聞こえる。
「朝ごはん食べに下おいでよ」「俺いいやー(ゴロン)」「影山はいいそうです」「アスリートはちゃんとご飯たべんちゃいかんで?」
しかし影山の意識はもうない。彼を起こすことは最初からしなかった。

僕は言われた通り下へ降りて、用意されたハムとレタスを乾いた残り物の食パンに挟んでさっさと平らげ、コーヒーを流し込むと、厨房のテーブルにラップを広げてサンドイッチを1つ作った。午前中は何もする予定がないし、今日の昼はこれで十分だ。普段は片付けに追われて騒がしいこの厨房も静まり返っていた。

昨晩は客がなかったのだ。昨晩も4人で食卓を囲むだけだった。
「あんたたちも今晩はビール飲むかい?」
この宿に居候して1週間と少し、すでに四杯のビールをいただいている。それも専用のサーバーから冷えたグラスに注がれる生のやつだ。
「お客さんいねぇのなんて久しぶりだなぁ、今日は早く眠れるからっせってワクワクしちゃってむしろ眠れないんさね」久々の休みを無邪気に喜ぶお母さん、できればワクワクしないで寝てほしい。その横ですでに寝ているお父さん、久々の雪かきで疲れているのだろうか。

晩ご飯は豪華に手巻き寿司。マグロのつもりで買ってきたというカツオの刺身も並ぶ。
「大葉挟んで食べな」
「ここんとこいネギトロあるから食べな」
「これ昨日の鍋だけどよかったら食べな」
お母さんは食卓に並ぶおかずを一通り勧めてくる。多分そうしないと気が済まないのだろう。進められるたびに少しずついただき、舌鼓を打つ。
ビールに合うものばかりが大量に並べられており、とても食べきれない、たくさん食べられなくてもったいない、そういう類のがっかり感さえ覚えるようである。

そんなゆったりとした時間も束の間、今日の夕方には全中のお客さんを迎え、これから5泊していくという。アルペンの朝は早く、朝食は6時半に食べたいとのこと。バイス台を地下に開ききれないから、玄関に置きたいとのこと。食あたりが怖いから、生物は出さないでほしいとのこと。要はめんどくさいのである。
外国人観光客の相手してる方が気楽でいいと漏らすお父さん。しかしそうはいいつつも全中という大きな舞台に立つ選手たちを応援したい気持ちがあるのだろう。
「おまえた明日から忙しいどぉ、頑張ってくれや」
ところがおまえた(江原影山)は明日から4日間不在なのだ。木島平でクロカン合宿に合流する。手伝いのおばさんたちもいないというが、どうか夫婦2人で頑張ってください。

何が言いたかったかというと、明日から木島です。
以上 江原

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