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ある日、奥多摩にて

その日は今年も音もなくやってきた。
否、来るべくしてキタと言った方が正しいであろう。

時は2018年10月20日土曜日、午前5時。
いつもより少し早く、しかしながら良く晴れた土曜の朝は心地よいモノであった。
秋の朝の肌寒くも凛とした空気が眠気を覚ましてくれる。

まだ家族は誰も起きていないが、黙々と朝食の準備をして一杯の紅茶をすする。
いつもより1枚多いトースト、ヨーグルト、そして今日のために買った豆大福を放り込み、足早に身支度を済ませる。

そして準備を整えクルマに飛び乗り、エンジンを吹かす。
朝の日差しはその黒い車を強く押すかのように力強く、それに呼応するようにアクセルを踏む力も心なしか強くなる。
早朝の田舎道は空いていて、カーステレオからお気に入りの音楽を聴いていると自然と上機嫌になる。

クルマを走らせること20分少々、旅のスタート地点に到着した。
東京の西を走るその電車の駅はやはり、少し肌寒い。
しかしながらサンサンと降り注ぐ強い日差しから気温が上昇することは容易に想像できた。

少し迷ったが、上下薄いアンダーを着て出走することを選択。
午前6時45分、レジェンドOBの藤原さんが到着。
身支度を整え、いざスタートポイントへ。

半ば命がけのこのレースの前には入念なストレッチが欠かせない。
幸いなことに今日は3日目前まで風邪を拗らせ、少し運動不足な点以外は上々な出来である。

時刻は6時54分、戦いの火蓋は落とさせた。
とはいっても現実にはポラールの無機質な電子音が響くのみである。
さぁ始まった、半期に一度の自分との闘い。

やはりこのレース、序盤から中盤はは本当に気持ちの良いレースである。
走り始めると息が上がり始めるが、森の空気を胸いっぱいに吸い込むと、疲れるどころか浄化されるような気分だ。
東京にこんなに心地よいロードレースフィールドがあるとはまだまだ東京も捨てたものではない。

レース初めのチェックポイント役場前をいつもより5分弱早く通過出来た。
思いのほか良い経過に自然と足取りも軽くなる。

この役場前から上川乗までの区間、この区間が一番好きだ。
役場を過ぎて幾何か交通量も少なくなり、鳥のさえずりや渓谷の瀬音が聞こえる。
そして適度なアップダウンが良いアクセントで、飽きの来ることのない区間である。

上川乗交差点、前回より10分のアドバンテージを確認し、俄然目標である3時間切りに近づいた。
しかしまだまだ油断はできない。ここからは確実にペースを落とさないように気を付けることにした。

今回こんなにもいいペースなのは少し走り方を変えてみたことが大きいと思う。
実は前日の金曜日に藤原さんをお迎えしてランニングのワンポイントレッスンを受けていた。
お忙しい中お越しいただいた藤原さんには感謝するとともに、この効果に驚いた。

詳細を記すことはここでは控えるが、ポイントは前傾と腕の振り上げにある。
平地では自然と足が前に、すこし傾斜がかかっても振り上げを意識することで体が引き上げられる感覚である。

数馬の湯、この時点で前回より15分は早く辿りつけた。
残り約4.5km全体からしたら距離はあと6分の1であるが精神的にはやっと半分といったところであろう。
いよいよこのレースの最後の最後のメインディッシュを頂く時が来た。

いつもよりペースが速かったせいか既に足はほぼ使い果たしている。。。
あとは気力で登るしかないないが、、、足がなかなか言うことを聞かない。

あと4キロ、3キロと道路標識がカウントダウンしてくれるが、3キロの次は1キロまで目印が無い。

この2キロ。

普段は何ともない距離であるが、この平均勾配10%に迫る道では気の遠くなりそうな距離である。
おじさんのロード乗りに抜かされる屈辱。
ぶっちゃけ登坂走をやった後にチャリで都民の森に来たところで、大した達成感は得られないのは事実である。

何度も歩いて行こうか考えた。いや傍から見たらほぼ歩いていたかもしれない。
しかし最後まで足を一歩前に、そしてまた一歩積み重ねることだけを考えた。

「都民の森 1㎞」

この表示を見た瞬間、救われる心地がした。今までのすべての努力が報われ、ついに栄光のゴールが見えた。
最後の180度ヘアピンを曲がり、緩やかな左カーブを抜け、ゴールは目の前に現れた。

藤原さんの「お疲れ様、良いペースじゃないか?」
この言葉を聞いてほっとした。

結果は3時間7分50秒。前回より20分近く短縮することが出来た。
しかしながら3時間切りの壁はまだまだ厚い。
「この壁を必ず破って卒業する。」そう心に固く誓ったのであった。

fin

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おがわら

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